怨返し─赦されない私の罪─


章太は維真と共にゆっくりと沈んで行った。大きくなっていた泡が逆にどんどん小さくなり、次第に泡は消えた。
清都は目の前の出来事をただ棒立ちで見るしか出来なかった。そして泡が無くなった意味を悟り、ゆっくりと後退していく。

泡が消えた場所に章太はゆっくりと浮上してきた。不気味な笑顔を清都に見せ、清都は歯をガチガチと震わせていた。

すると章太の横隣から維真が浮き上がってきた。さっきのような抵抗はしていなく、静かに浮上してきた。
目は死んだ魚のような目をしていて、生気は感じられない。

章太はまたゆっくりと水中へと入っていく。
これまでの状況で清都の固まっていた身体は、章太が水中へ入った意味を脳が理解した時、すぐに動き出した。


次は!俺の番だ!


「うわあああああああああああああ!!!!」


清都は叫びながら更地まで泳いでいった。だが、これは泳ぎというよりは走り。まるで地上を走っているかのように水を蹴り、腕は水面を掴みながら逃げていた。


し、死ぬ!捕まったら殺される!終わる!俺の人生!まだ十七歳だぞ!嫌だ!嫌だ嫌だ!


「嫌だ嫌だ嫌だぁ!!!来んじゃねぇ!!来んじゃねぇよぉ!!章太ぁぁぁぁ!!!」


心の叫びは次第に言葉に変わり、清都は無我夢中で逃げた。何とかして川から這い上がり、更地に足を踏みいれた瞬間、右足がグッと後ろの方へ引っ張られた。
清都は見ずとも理解していた。章太の手。地獄への片道切符。


「うわぁぁぁぁぁ!!やめろぉ!やめてくれぇ!!」


清都は必死に右足を揺さぶり、その白く殺意で染まった手を引き離そうとした。
章太の手は引き離さまいと、服を通り越し清都の足に爪を食い込ませた。
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