怨返し─赦されない私の罪─


だが、章太が美苗の首を絞めるのは止めず、むしろ力を込めた。美苗は舌を出し、目が段々と白目になっていった。


「ッ!章ちゃん!!!」


依奈はポケットに閉まっていたお守りを取り出し、それを前に出しながら走った。
章太と依奈の距離が段々縮まっていき、ほんの二、三メートル近付いた時。章太はフッと煙のように姿消した。

美苗は崩れ落ち、その場に倒れた。


「美苗!」


依奈は美苗に駆け寄って、抱き寄せた。
美苗は依奈が呼びかけても目を瞑ったままで、ピクリとも動いてなかった。


「う、嘘でしょ!?美苗!私の声が聞こえる!?美苗!!!」


依奈は何度も何度も呼びかける。だが、美苗からの返答は無言だった。
依奈は美苗の服の中に手を入れ、胸のところに手を当てた。
柔らかく、温かいその胸が冷えてしまってくるのを必死に心の中で拒絶しながら、依奈は全神経を掌に集中させた。

数秒後、胸の奥から押し寄せてくる鼓動を感じ取った。依奈は安堵の息を漏らしながら、全身の力が抜けた。


「は、はぁ....よ、良かったぁ...美苗、大丈夫?美苗?」


依奈は美苗の頬を叩きながら呼び起こそうとするが、美苗は目を瞑ったままだった。
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