怨返し─赦されない私の罪─

気を失っていた。だが、生きていることが依奈は嬉しかった。


依奈はその場で立ち上がり、裕子に電話をしようと携帯を耳元へかざした。だが、何回もコールがあっても裕子は電話には出なかった。


「?裕子?道に迷っちゃってるのかな?」


依奈はもう一度掛け直し、美苗の身体の上にお守りを置き耳元に携帯を当てながら、来た道を帰ろうと美苗の元から離れた。

先程かき分けた草木は反動で元に戻っていた。依奈は溜め息を吐きながら、その草木を退けた。
すると、黒い大きなシルエットが依奈の目の前に現れた。依奈はそのシルエットに仰天し、頭の方へ目線をあげようとした瞬間、鈍い音が響き渡った。

ガチュッ!

依奈は頭のてっぺんに凄まじい痛みを感じると、身体中の力が無くなり、前に倒れた。
地面の冷たさを頬で感じながらも、依奈は混乱していた。
何故自分は倒れているのかすら、依奈は理解していなかった。

依奈は髪の毛を上に引っ張られ、ゆっくり立ち上げさせられた。
依奈は意識がぼやけ、薄っすらとしか見えない視界でシルエットの正体を捉えた。

正体は頬に血がついてる享吾だった。冷徹な眼差しを依奈に向け、まるで家畜を見ているように思えた。
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