怨返し─赦されない私の罪─
「う...うう....うううううううぅぅぅぅ!!....」
章太は依奈の言おうとしたことを察していた。自分も同じ気持ちだから、章太は分かった。
そしてその言葉を聞いた時、章太は依奈の側から離れることが出来なくなると確信した。自分が今一番聞きたい言葉を聞くことを、愛する者の為に拒んだ。
それは依奈自身も感じていた。章太の行動の意味を察していた。だからこそ悲しかった。
声は届くのに自分の気持ちを伝えられない、近いようで遥かに遠いその距離感。
依奈は自分のワガママを通せないと感じた。ここまで覚悟を決めた章太の意志を無下にすることは出来ないと。
「....グスン...もう....章ちゃんのバカ....」
依奈は透明な涙を流しながら精一杯の笑顔を章太に向けると、章太の顔に自分の顔を近付け、抱き締めながら唇を合わした。
自然と身体はポカポカと温かくなり、章太の体温を唇からだけではなく、身体全体で感じていた。
章太は目を見開いていたが、キスを噛みしめるかのように、目を瞑り抱き返した。
たった数秒だが、依奈と章太は幸福感で満ちていた。二人は身体ではなく、心ではなく、魂が合わさっていくような感覚になった。
依奈は唇をそっと離し、章太を見つめた。
「....見ててよ。章ちゃんよりずっといい男を掴まえて、絶対に幸せになるから。
あの世で後悔しても、もう遅いんだからね。」