怨返し─赦されない私の罪─
「ごめん静華、ちょっと遅れちゃった。」
「そうね、約束より十分の遅刻。この珈琲を飲み終わる前に来てくれて良かったわ。」
「いや...本当にごめん....ちょっと野暮用が...」
静華は少し困った顔を作った依奈を見逃さず、顔を覗かせながらニヤニヤしていた。
「当ててあげましょうか?あなた、誰かに告白されてたわね?」
「え?なんで分かるの!?」
「分かるわよ。あなたって本当に正直だもの。それにこんなことも分かる。告白されたけど、章太君の事を忘れられずにふったでしょ?もう手に取るように分かるわ。」
依奈はしょんぼりとして、静華が用意してくれていた珈琲を片手で持ってズズっと啜って飲んだ。すると、静華はあからさまに咳をして、依奈はムスッとしながら両手に持ち替え、音を出さないようにして飲んだ。
「全く....モテるような仕草を教えてあげた私の苦労が無駄じゃない。どうするつもりよ?このままだと未来永劫に章太を引きずって、誰とも付き合えず孤独死よ?」
「うっ...何も言い返せないです....」
「それに仕草もこう簡単に解けちゃうとはね...ダメよ?どんな時でもそういうことしなきゃ。」
「でも、こんな時くらいよくない?毎回毎回気を使ってると頭が痛くなってくる....」
「身体が覚えるまでは我慢しなさい。それに、こういう時でも目を光らせてる男はいるのよ?ほら、あそこのテーブルの男達を見てみなさいよ。」