鳴らない電話を抱きしめて
塾に着き、学年が違う先輩と別れ、私は自分のクラスで集中して授業を受けた。

全ての授業が終わると、私は親に連絡した。

親がくるまでの間、近くのカフェで今日の復習をするのが日課になっている。

大好きなカフェモカを飲みながら、サンドイッチを摘まんで、板書したノートを見る。

「お疲れさん。」

と言われて見上げると、藤堂先輩が笑顔で近づいてきた。

「藤堂先輩。お疲れ様です。」

私は口に入れたサンドイッチを急いで咀嚼してから答えた。

「何してんの?」

「迎えが来るまで、今日の授業の復習してるんです。」

先輩は持っていた飲み物を置き、自然に私の隣に座りノートを覗き込む。

「よく頑張ったな。」

と言って、頭を撫でてくれる先輩。

嬉しくて目を閉じて、されるがままになった。

初対面なのに、先輩が触れても少しも嫌な気持ちにならなかった。

付き合っていたのに、全く触れて来なかった元彼の方がおかしかったのだとも思えた。

やっぱり、告白してきたものの、一時の気の迷いで、本当は私の事 そんなに好きじゃなかったのだろう。



テーブルの上のスマホが震える。

迎えが到着した事が分かった。

「今日はありがとうございました。迎えが来たので帰りますね。」

「迎えって… 彼氏?」

「いえ…親です。彼氏はいませんし。」

立ち上がり先輩にお辞儀をする。

「じゃまた明日な。」

と言われ、はい! と返事を返すと、私は迎えの車に乗って家へと帰った。
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