鳴らない電話を抱きしめて
「里緒ちゃん。テレビ電話にしよう。そしたら、課題も教えてあげられるしさ。」

テレビ電話… 既にすっぴんの顔を、先輩に見られたくなかった私は、どう誤魔化そうか悩んだ。

「大丈夫。里緒ちゃんなら、すっぴんだって可愛いよ。」

絶句した。電話口で息を飲んだのが分かったのかな?

考えてた事を見透かされた事に、先輩ってエスパー?と本気で思った。

聡達のグループを囲む女達みたいな派手なメイクはしないけど、だからといって すっぴんを見せられる程容姿に自信はない。

「里緒ちゃん、早く!」

と急かされ、テレビ電話に切り替えつつ、慌てて手櫛で髪を整えた。

「お!やっぱ、すっぴんも可愛いじゃん。ってか、あんまり変わらないよな。」

「やめて下さい。んもぅ、恥ずかしいから、あんま見ないで下さい。」

「照れてる里緒菜。可愛いな。」

「も… ぅ… 先輩、からかわないで下さい。それよか課題やらないとですよ?」

私は何とか話題を変え、課題に集中する。

先輩は、カメラの向こうでクスクス笑っていた。

カメラの向こうで先輩が見てると思うと、緊張してしまい、課題を終えるのに時間がかかってしまった。




それからというもの、先輩は毎日図書室で勉強をした後、塾がある日は一緒行き、塾がない日はそのまま家迄送ってくれるようになった。

別にカレカノの関係じゃない。
ただの先輩後輩の関係。

聡との恋に疲れてしまっていた私は、そんな曖昧でフワフワした関係が心地よかった。
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