鳴らない電話を抱きしめて
「最近、藤堂先輩と仲良いじゃん。」

ある日のランチの時、親友の絵梨がニヤニヤしながら聞いてきた。

「仲が良いって… 先輩とは塾が同じだから、いろいろ教えて貰ってるだけだよ。」

と、誤魔化した。

理沙と佳奈からも ん⁈ マジでそれだけ? と冷やかされたが、私は必死に誤魔化した。


「でも、ま、いんじゃない?最近、里緒菜、明るくなったしさ。」

「そうだね。入間と付き合ってた時より、綺麗になったしね?」

え⁈ 何…言って… と慌てたら、皆にクスクス笑われた。

「もぅ!だから、先輩とはそんなんじゃないってば。」

どれだけ言っても、彼女達のニヤニヤ笑いは収まりそうも無く、私は仕方なくお弁当の卵焼きを口の中に放った。


確かに先輩との時間は楽しい。

でも、初めて話をした時以降、ドキドキする事はない。

例えるなら、勉強が出来る頼れるお兄ちゃんと一緒にいる、そんな感覚の方が強かった。

きっと先輩も私の事を、手のかかる妹ぐらいにしか思ってないはず。

だって、皆が思うような甘い雰囲気になった事が一度もないのだから。



先輩はとても頭がいい。

塾で分からなかった箇所も、質問すれば丁寧に教えてくれた。

頭が良い事を自慢するわけでもなく、ただ淡々と、でも分かりやすく教えてくれる。

こんな事言ったら失礼なんだろうけど、家庭教師みたいだなって思ってた。

ドキドキだったら 聡との方がドキドキしたよね。

まぁもぉ そんな事は二度と無いんだけど……

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