鳴らない電話を抱きしめて
学校生活に慣れた頃、私は、仲良くなった絵梨・理沙・佳奈とお弁当を食べ終え、のんびり昼休みを過ごしていた。

そんな中、廊下をバタバタと走っている音が聞こえてきた。

騒がしいなぁ、廊下は走っちゃダメって、小学校の時に言われてなかったのかなぁ… なぁんて思っていたら、足音は私達のクラスの前で止まった。

足音の代わりに聞こえたのは、

「絵梨!オイ!どこだ?返事しろ!」

と、私の隣でスマホを弄っている絵梨を呼ぶ大きな声だ。

クラスの女子達がザワザワし始める中、

「絵梨⁈廊下でイケメン呼んでるよ?」

と漫画を読んでいた佳奈が、廊下の方から聞こえた声の主を一瞥した後、絵梨に呼びかける。

「ホントだ‼︎カッコいい‼︎絵梨の彼氏?」

と理沙も頬をほんのり赤く染めて反応。

スマホから顔だけを廊下に向けた絵梨は、はぁと大きな溜息をついた。

ガタッと椅子から乱暴に立ち上がった絵梨は

「煩いな!ここにいるわよ。」

とご立腹の様子。

絵梨さん?美人が台無しですよ?と言ってあげたくなるぐらい、嫌そうな顔をして教室を覗くイケメンを見ていた。

「絵梨!ちょっと来いや。」

と、絵梨を見つけたイケメンさんは、ズカズカと教室の中に入って来ると、絵梨の腕を引き廊下に向かって歩き出した。

イケメンさんなのに乱暴で残念だわ… と佳奈と理沙と話していたら、

「里緒菜?ちょっと来てくれる?」

と廊下にいる絵梨に、今度は私が呼ばれた。

なんだろ?ちょっと行ってくるね〜と佳奈理沙に言って、私は絵梨の方へと足を向けた。

「絵梨?どうしたの?」

と話しかけると、

「ちょっと来て?」

と、今度は私が腕を引かれた。
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