鳴らない電話を抱きしめて
聡の友達 〜修哉side〜


聡が、彼女である里緒菜ちゃんと連絡が取れず悶々としている。

俺らは、聡の生活を知っている。

当然聡のバイトの事もだ。

だから聡が、普通のカップルみたいに、里緒菜ちゃんとカレカノらしい事が出来ない事を理解していた。

でも里緒菜ちゃんはそれを知らないようで、聡との接触を避けるようになった。

しかも最近、2年の藤堂と会っていると聞く。

里緒菜ちゃんは別れると決めた様だけど、
聡にそのつもりは全くない。

聡は里緒菜ちゃんにべた惚れだから。

俺は親友の為に一肌脱いでやろうと、里緒菜ちゃんの親友で俺の幼馴染みのアイツに話をしようと決めた。


「おい!ちょっといいか?」

「何?もうSHR始まるんだけど!」

俺は幼馴染みの絵梨を呼び出し、廊下の一番端まで連れて来た。

絵梨は、汚い物でも見るような目で、俺を見上げてくる。

「おい!そんな軽蔑する様な目で見んな!」

確かに聡の事で、里緒菜ちゃんが苦しんでいるのは知っていた。

その事で、絵梨達里緒菜ちゃんの友達の子達が俺らを怒っている事も。

「オイ!んな怒んなって。」

「ふん!分かってんなら、早く話をして!」

喧嘩腰の絵梨を宥めるように

「…ったく。…朝から機嫌悪りぃな、お前は…。」

と半ば苦笑い気味で話しかけた。

すると絵梨はそんな俺を嘲笑うかのように、

「修哉さん?お話とはなんですか?早く話頂けないのなら、後程にしてもらえます?」

超絶綺麗な笑顔を貼り付け、これまた超が付くくらい丁寧な言葉を放ってきた。

一瞬目を仰け反る俺を一瞥したが、尚も笑顔で俺を見つめてくる。

昔から俺は、絵梨にじぃーと目を見つめられるのがとても弱い。
直ぐに顔を赤くして目を逸らしてしまう。


幼稚園の頃から一緒の絵梨。

優しい絵梨は、しっかり者の姉御肌。
だからいつも絵梨の周りには、可愛い子が絵梨に守られるかの様に一緒にいた。

俺もホントは絵梨の事が………

いやいや!

そんな事より、今はこっちだ。

俺は絵梨を見て、言うべき言葉を言おうとしたその途端、SHRが始まる鐘が鳴った。

絵梨はニヤッと笑って、

「あら残念。お時間が来てしまったようですわね。では、御機嫌よう。」

踵を返して、教室に戻って行った。

「クソっ! 」

という俺の声だけが、虚しく廊下に消えていった。
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