鳴らない電話を抱きしめて
なおも俯く修哉君に

「里緒菜は俺のだから、誰にも触らせたくない。あんな思い、二度としたくないんだ。」

と私の目をしっかり見つめながら、聡は手を伸ばし私の頬に触れた。

「ごめんな?里緒。びっくりしたろ?」

首を縦に振る私を優しい瞳で見つめる聡。

何も言えない私の頬に触れたまま、

「悪い。2人で話したいから、ちょっと外してくれるか?」

と、絵里と修哉君に問いかける聡。

「ああ。」
「うん。」

と言って2人は隣のテーブルに移動して行った。


注文を聞きに来た店員さんに、

「俺は珈琲。里緒は紅茶だよな?」

と言って頷く私に微笑むと、オーダーを済ませ私に向き直る聡。

そんな聡に店員さんは頬を赤くしてオーダー確認をするが、素っ気なく「ああ。」と横目で返して私に向き直る聡に面食らう。


「久しぶり 里緒。元気だったか?」

「うん」

「塾行き始めたんだってな」

「うん」

「里緒 前に言ってたもんな?将来は幼稚園の先生になりたいって。だから勉強頑張ってんだよな?」

「うん」

「里緒?」

優しく問いかける聡の顔を見ると、

「俺は里緒と別れるつもりはないよ?」

と微笑む。
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