鳴らない電話を抱きしめて
対峙
丁度店員さんが珈琲と紅茶を持ってきた所だったので、私は慌ててそれ等を受け取った。
「砂糖とミルクは?」
と頬を赤く染めて聡に尋ねる店員さん。
「要らない」
と素っ気なく答える聡だから、それでも店員さんはその場を動こうとせずモジモジしていた。
すると突然彼女は、
「アノ!これ受け取って下さい。」
と小さく折られたメモを聡に差し出した。
どうやらそれは、彼女の連絡先が書かれているようだった。
半ば押し付けられる様に渡されたメモを受け取った聡は、チラッと開くと直ぐにビリビリとメモを破り捨てる。
「な!」
と呟いて真っ赤な顔をした店員さんに
「見て分からない?俺 彼女いるんだけど?」
と貼り付けた様な笑顔を向ける。
「で、でも… その女より、私の方が可愛いし!」
と私を睨みつける店員さん。
私を睨んだって、決めるのは聡なのに。
と困惑してる私を見つめる聡は、
「里緒?安心して?俺は里緒だけだから。な?」
と甘い声で囁かれた。
そんな甘々な聡を見た事が無い私は困惑しかなく、私の頬に添えられた聡の手の温もりにも動揺を隠せずにいたが、そんな私を見て
「やっぱり可愛いな。里緒は」
と更に優しく囁くから、店員さんは何も言わず逃げる様にテーブルから離れて行った。