鳴らない電話を抱きしめて
「でもな?ヤラシイことは一切しないんだ。それは信じて欲しいんだけど。ただ、女に疑似恋愛を楽しんで貰って、楽しい時間を提供するのが俺達男性キャストなんだ。」

頭が全くついて行かない私は、ぼんやりと聡を見ているだけだった。

「里緒?」

と呼ばれ聡を見ると、

「信じてくれ。俺は里緒に対して疚しい気持ちは全くないんだ。でも、里緒を悲しませた。ホントごめんな?」

眉を下げて悲しみの色を滲ませる聡の瞳を覗き込む。

どうやら嘘ではないらしい。

「信じていいの?」

と聞くと、

「勿論!」

と速攻で返事が返って来た。

「じゃあ、なんで私からの連絡は既読スルーだったの?」

「それは…忙しくて。それにバイト中は、スマホは会社支給の持たされてたから…」

「仕事って、そんなに遅くまでかかるんだ?ヤラシイことしてるからなんじゃないの?」

と疑いの目を向けると、

「それは絶対ない!!」

とやっぱり速攻で返された。

「最近さ、指名されるのが増えたんだよ。平日は部活あるから、部活がない土日の午後とか 部活終わってからとかに会社から呼び出されてさ。『指名入ったから来て欲しい』ていわれるんだよ。何度か会ってると、飯奢ってくれたりプレゼント貰えたりするから断れなくなって。でもやっぱり気を使うからか、部屋戻ってくるとシャワー浴びたら即寝落ちしちゃって…スマホも見ずに朝が来るっていう生活してる。」

< 30 / 34 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop