鳴らない電話を抱きしめて
「でもそんなんだったから、里緒が離れて行きたくなる、信じられなくなるのは当然だよな?ホント マジごめん。」

項垂れた聡をじっと見つめていると、

「里緒?里緒は、俺と初めて会った時の事覚えてるか?」

と聞かれた。

「初めて会ったのは、聡に呼び出された時でしょ?覚えてるよ?」

「いや。俺達 もっと前に会ってんだよ。覚えてないか?コレ」

と言って、聡はGパンのポケットの中から消しゴムを取り出した。

掌に乗せられたそれを私はじっと見つめてみたが、ただの消しゴムにしか見えなかった。

「これ、元は里緒のなんだ。覚えてないか?受験の時……」

私は、「あ!」と声を出した。

思い出した!受験の日、隣の男子に貸した消しゴム。

まだ戻ってなかった。てか、そもそも忘れてたな。

「俺が消しゴム無くて焦ってた時、2つあるからどうぞって貸してくれたろ?」

「そうだったね。思い出した。」

郷は笑って

「あの時ホントはめっちゃ焦ってて。でも、里緒がコレ貸してくれたから、俺マジで嬉しくて。その時絶対受かって、この子に告白するんだって思って。」

「あ、ありがと」

「コレ、それからずっと俺のお守りなんだ。」
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