鳴らない電話を抱きしめて
「え?」

「コレがあったから、俺はこの学校に入れた訳だし、里緒とも付き合えた。部活でしんどい時とかも、コレ握りしめてると 頑張ろうっていう思えてくるんだ。里緒も今頑張ってるだろうから、俺も頑張らなきゃなって。」

「聡……」

「だからさ。コレはお守り。」

そう言ってニコッと笑う聡につられて、私も笑顔になった。

「里緒菜さん。もう一度俺にチャンスを下さい。バイト減らして、里緒と向き合う時間作るから。だからもう一度俺と……いや違うな。もう一度俺を信じて、俺の所に帰って来て欲しい。先輩じゃなくて、俺の彼女として」

そう言ってテーブルの上に置いたままだった私の手を握って懇願するかの様に見つめられた。

「聡?」

「ん?どうした里緒。」

「今度こそ、今度こそは、私を大切にしてくれる?寂しくさせない?」

「あぁ、勿論。約束する。だから…いいのか?」

キュッと私の手を握る聡を見つめ返し、私は小さく頷いた。

「分かった。聡の隣に帰るね。」

聡は見る間に顔を赤くして、そして嬉しそうに頷いてくれた。

こうして私達は、もう一度カレカノの関係に戻った。

「あ!そうだ。」

突然声を出した私に、

「里緒?」

と聡。

「さっき聡、『先輩』がどうとか言ってなかった?」

「あぁ。里緒が最近、先輩と仲良く勉強したり、塾行ったりしてる話聞いたからさ。」
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