鳴らない電話を抱きしめて
聡からの告白で付き合い始めた私達。

最初の頃は、毎日聡から電話やメッセージが届いた。

バレー部の聡は毎日部活があったから、帰宅部の私と一緒に帰る事は無かったが、毎晩聡と話す時間がとても楽しかった。

土日も部活がある聡とは週末も会えなかったが、聡が頑張ってると思えば、寂しさも我慢出来た。






そんな日々を過ごすようになって半年。

季節はすっかり秋になっていた。

相変わらず、カレカノの関係なのに週末のデートも無いし、一緒に帰る事も無い。

それでもいい。私達はちゃんと付き合っているのだから大丈夫。

と…そう思っていたのに…。




週末、友達との待ち合わせ場所へ向かう道で、私は立ち止まって息を飲んだ。

数メートル先を歩く男女の男の方は、私の彼氏である聡。

今日は部活のはずの聡は、綺麗な女の人と腕を組んで歩いていた。

聡を見上げて話す彼女の顔は、恋する女の子そのもの。

そんな彼女を見下ろす聡の顔は、とても優しかった。

私には一回も向けられた事が無いその顔に、どこか苛立ちを覚える。

なんで聡の彼女のはずの私が、こんなシーンを見ないといけないの?

私と週末会わなくても、その子とは会うんだ…私と過ごす週末なんて初めからなかったんだ。

じゃぁ何で告白なんかしたのだろう。
好きじゃないなら、無理にしなくたっていいじゃない。

そういえば、最近学校で会っても目も合わなくなった気がする。

もしかしたら、聡にとって私はもう終わった存在なのかもしれない。

そもそも、始まってもいなかった?

見た目麗しい聡と比べて、容姿も中の中な私

告白も何かの罰ゲームだったのか?


道端でグルグル考えていたら、聡達はもう見えなくなっていた。
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