鳴らない電話を抱きしめて
翌朝

正門を潜ると、女の子達の悲鳴にも似た声が聞こえた。

聡がいるグループが現れたんだと思った。

聡のグループはイケメンばかりだから、同級生は勿論、上級者にも他校生にも人気があった。

聡達を見つけ、直ぐに走り出す女達。
きっと、アッいう間に囲まれるんだろう。

「おはよう。修哉くん!」

「今日もカッコイイね。」

「ねぇ。聡君、また私とデートしてよ。」

後ろから聡達に話しかける甘えた声が聞こえてきた。

やはり、私以外の子とはデートするんだな。と思ったが、もう後ろは振り向かなかった。

どうせ聡の視界にも意識の中にも、私の姿は入ってない。

終わった事だから、どんな事実も噂も、私には関係ない。



下駄箱で上靴に履き替え、教室へ入る。

いつもの様に元気よく
「おはよう」
と言いながら、友達の側へ。

彼女達からも おはよう と返ってきた。

眼下に広がる、女子に囲まれる集団を見て、

「相変わらずだねぇ」

と呟く理沙の言葉に、特別反応する事もしない。

彼女達も、私の決心を知っているから、特に何も言わなかった。

有り難いと思った。

淡々と朝の支度を終え、席に座った。

大丈夫 私は平気だ。落ち着いている自分を確認した私は、少しだけ口角を上げた。

授業が始まるとしっかり私は前を向き、お気に入りのシャーペンを握りしめた。

自分の夢を叶える為に、やるしかないのだと言い聞かせながら…
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