鳴らない電話を抱きしめて
あの日の夜決めた事。

それは幼い頃からの夢を叶える事。

それには絶対に大学へ進学しなくてはならないのだ。

私は、今までなんとなく受けてた授業を真剣に聞く様にした。

塾にも通って、今までに分からなかったところも取り戻す。

聡の言動に一喜一憂する馬鹿な女は卒業すると誓ったから。


帰宅部の私は、塾へ行くまでの空き時間を図書室で過ごす事にしていた。

塾では今学校でやっている勉強をするから、復習は独学になる。

私は参考書を買い込み、ひたすら問題を解いていた。



行き詰まった………
全く分からないし進まない。

やっぱり独学は無理があるなぁと天井を見上げたら、

「どうかした?」

と後ろから声をかけられた。

「ほへ?」

見上げたまま振り向くと、私を見下ろす人。

どこかで見かけた事がある…気がする?
その人は、見上げたまま固まっている私を見て、ククッと小さく笑うと、

「ココが分かんないの?」

トン!と参考書を指し示す。

「あ… えぇ… えと…はい。」

「ん。見せてごらん?」

その人は私の隣に座って、私が一向に進まない問題を一瞥すると、直ぐにシャーペンを持ち、いとも簡単に問題を解いてしまった。

呆気にとられた私の顔を覗き込み、

「これはね… 」

と解説を始めたので、私は急いでそれを聞き漏らさないようにと問題に向き直った。
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