鳴らない電話を抱きしめて
綺麗な横顔と低いけどよく響く声にドキドキしてしまう。

が、はっとしてその人の手元を見る。

(ダメじゃない!折角教えてくれてるんだから集中しないと。)

私は、ノートに綺麗な字で解かれた数式を見つめた。

「ここ迄のやり方は合ってるよ。でも、この後はこの公式を使わないと解けない。」

図書室だから、顔を近づけ どうしても囁く様な話し方になってしまうけど、その人の分かりやすい説明を聞いていると、頭の中のモヤモヤがスッキリした。

「ありがとうございます!凄く良く分かりました!」

私は立ち上がって、大きな声でお礼を言った。

途端に周りからギロッと睨まれる。

此処が図書室だった事を忘れてた。

私は顔を赤らめて、小さな声で周りとその人に謝罪した。

「本当にありがとうございました。」

私は笑顔でお礼を言うと、その人は小さく頷いてくれた。

「オレで良ければ、これからも教えるよ?」

その人は素敵な笑顔でそう言ってくれた。

「本当ですか?凄く嬉しいです。ありがとうございます。」

「他は?大丈夫なの?」

と問われ、

「お時間大丈夫なんですか?」

と聞いてみた。すると、

「大丈夫だよ?俺、理系だからそっち系なら教えられるけど?」

「えと…なら、コレはどうですか?」

その人の前に付箋を付けておいた問題を差し出すと、少し考えた様子を見せたもののさらさらっと解いて、また私の前に戻し解説を始めてくれた。

その人の優し人柄と分かりやすい説明は、私の心の中を暖かくした。
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