もしも叶うなら、私はもう一度この大空に恋をする。
あたしの曇りがかった心の中に陽が差して、夜が明けようとしている。
凍りついた体がその陽を浴びて溶けて動き出す。
気づけば人ごみもなくなっていて、あたしはあいつの目の前まで走っていた。
ほんとうに夢じゃないんだよね……?
神様が見せた幻なんかじゃ、ないんだよね……?
確かめたくて頬に手を伸ばす。
頬の柔らかい感触が確かに手に伝わってきた。
目を丸くして確かめるあたしを見てこいつは苦笑いをした。
「…なんだよ。幻か何かだと思ったのか」
あたしの手に重なる温もり。
あぁ、ずっとどこかで探していた懐かしい温もり。
そして何より……
「久しぶりだな……ちゅんすけ」
小さくて名前が雀だからってずっと呼ばれていたあだ名。
あの時とは声が低くなっているけど、あたしをこう呼ぶのはこいつしかいない。