キミに伝えたい言葉がある



俺の近くにお題になるような物があるのか?と周りをぐるりと見渡していると、ガシッと手を掴まれ、視線を戻すと、莉桜菜が俺の手を握ってにっこりと笑った。


「は?」
「真司君、来て!」


そう言うなり、莉桜菜は俺の手を掴んだまま走り出した。
引っ張られて俺も走る形になる。
何が何だかよく分からないまま、気がつけばゴールまでしていた。


「はい、お疲れー」


ゴールにいた生徒に声を掛けられ、莉桜菜は返事をして選手の列に並んだ。
息はかなり上がっていて、キツそうだ。


「おい、大丈夫か?」
「え?うん、大丈夫だよ」
「本当か?」
「大丈夫ー」


本人はそうは言っても、息は荒いし、落ち着く様子はまだない。
退場してからもこのままだったら保健室に連れて行こうと思った。


「それより、ごめんね」
「何が?」
「一緒に走らせちゃって」


競技が終わり、白組が勝った。
笛が鳴って選手が立ち退場する準備を始める。


「それはいい。あ、でも、お題なんだったんだ?」


俺がお題に当てはまるなんて、どんな内容だったのか純粋に気になった。
でも、莉桜菜は笑みを浮かべたまま「秘密」と言った。


「なんだよ、秘密って」
「秘密なのー」


絶対に莉桜菜は教えてくれなかった。


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