キミに伝えたい言葉がある
オーディションなんて大きな事を簡単に決められる訳ないだろう?
そう言うと、莉桜菜はますます首を傾けた。
「もっとシンプルに考えても良いと思うけど?」
「え?」
「だって、オーディション合格するかしないかって受けてみないと分からないでしょう?光平君は、受けたい。だったら、彼の夢に付き合ってあげても良いと私は思うよ。真司君が絶対嫌だ!って言うなら話は別だけど」
「絶対、嫌・・・」
自分に聞いてみるが、心底嫌だとは思えなかった。
「チャレンジすることはいいことだよ?私、真司君の歌、好きだし」
「そうか?」
「うん、上手だし、聞いてて心地いいもん」
光平も前にそれらしいこと言っていたな。
俺の歌を聴いて、誰かが心地よい気持ちになってくれるならそれはとても嬉しいことだ。
「これから、成人してさ、あのときこうしていれば良かったなって後悔しない生き方をして」
「莉桜菜・・・」
彼女のその言葉にはとても重みがあった。
莉桜菜は、成人までいきられない。その先の未来は見えない。
だからこそ、思い残すことのないようにやりたいことをやるし、分かるからこそアドバイスもくれる。
「あ、そうだやりたいことリスト化してみたの」
そう言って莉桜菜は、傍らの棚から一枚の紙を取り出して俺に渡してきた。