キミに伝えたい言葉がある
いつもは堂々としているのに、何時にもないその姿に俺は思わず小さく吹き出してしまった。
光平でも、悩む事なんてあるんだな。
「ーーー光平」
俺は、そっと光平に近づいた。
俺が近くに来ていることなんて気づいていなかった光平は、大きく肩を震わせて顔を上げる。
「し、真司?」
「よう」
「びっくりしたじゃないか」
「なんでだよ」
ハハッと笑ってから、俺は光平の隣に座った。
座った俺を見て、光平は視線を前に戻した。
「ーーー考えて、くれたか?」
恐る恐るといった体で少し声は震えている。
「ーーーその、答えをしにきた」
静かな河原の少し冷たい空気の中、俺の声は溶けていった。
「あぁ」
「オーディションだけど・・・受けてもいいよ」
「・・・・え?」
拍子抜け、といった間抜けな顔で光平が俺を見た。
その顔が面白くて俺は笑ってしまった。
「一度だけだぞ?お前に賭けていい」
「ほんと、か?」
「ほんと。受けるよ」
「イ、ヤッターーー!!!」
光平は、ベンチから飛び上がってガッツポーズをした。
「うわぁお」
「真司!!ありがとう!本当に!お前はもう大好きだ!!」
俺の手を取って、光平は何度もありがとうを繰り返す。
時々言葉が変になりながらも、本当に嬉しいようだ。
俺は、喜んでくれて良かったと思う。