キミに伝えたい言葉がある
莉桜菜が向かった先には、桜の木があった。
いつも莉桜菜が見上げていた木。
「あーまだ、咲いてないなー・・・」
莉桜菜は桜の木の下で立ち止まると、見上げながら残念そうに呟いた。
「もう少し、先だな」
「ねーつぼみもまだだー」
はぁ、と莉桜菜がため息をつけば、大きな白い息が出た。
「最後に、見たかったなー」
「莉桜菜・・・」
莉桜菜は、桜から俺の方に体ごと向き直って、頭を下げた。
「今日は、私の我が儘を聞いてくれてありがとう」
「・・・急にどうしたんだよ」
「へへ、なんか変な感じかな?」
「あぁ・・・」
苦笑すれば、莉桜菜も同じような表情を見せる。
「真司君と最後にお出かけできて、私幸せだったよ」
最後、の言葉に俺は反応してしまった。
「最後・・・」
「うん、最後。真司君のおかげでリストに書いたことほとんど出来たし・・・満足満足」
頷きながら、莉桜菜は俺の方に歩いてきた。
そして、触れられる距離で止まる。
「ごめんね」
「・・・何が?」
「振り回しちゃって・・・最初から最後まで」
眉を下げて申し訳なさそうだ。
グッとこみ上げてくるものを感じながら、俺はそっぽを向いた。
「本当だな・・・いつも俺は莉桜菜に振り回されてばっかりだった」
「ハハッ、ごめんって・・・でも、楽しかったでしょう?」
「そうだな・・・楽しかったよ」