キミに伝えたい言葉がある



莉桜菜が、転校してきてから本当に俺は振り回されてばかりで、でも思い返してみるとそのどれも楽しいことばかりだった。


「よかった」
「莉桜菜のおかげで、俺の視野も広がっていったし・・・苦手なコミュニケーションもなんとかなるようになった」

「あら、じゃあ私のお陰ってこと?」
「調子に乗るなよ」
「ふふっ」


莉桜菜は、もう一歩前に出て俺に抱きついてきた。
俺は引きはがすことなんてせずに莉桜菜を受け止める。
彼女の全体重が俺に預けられた。


「これまで、私本当に幸せだったよ」
「・・・そうか」
「毎日、楽しかった・・・」
「俺もだ」
「本当は・・・・いいや、これ言っちゃうと覚悟が揺らぐから」


莉桜菜が何を言いたいのか、俺には分かった。
まだ、17歳の女の子だ。
死への覚悟をしたと言っても、心の底では無理に決まっている。
誰しも、生きていたいと思うのが当たり前なのだ。


それでも、莉桜菜は気丈に死へと向き合い、受け入れた。
俺も、拒絶したいことだが、莉桜菜が決めて覚悟を決めたのなら同じようにする。


この、温もりが消える日が来るのだ。


「ね、真司君。私、キミに言いたい言葉があるの」
「偶然だな。俺もだよ」
「えぇ?何?」


顔だけあげて、俺を見上げてくる。


「莉桜菜の方からどうぞ」
「真司君の方から聞きたいな」
「レディーファースト」
「それ、酷くない?」


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