キミに伝えたい言葉がある



「わ・・た、し」
「うん」
「ず・・・と、ね」
「うん」
「・・す、き・・・」

「っ、俺もだよ」


『好き』


たった2文字を俺たちは言えなかった。


そして、やっと、言えた。


「う・・れ、し」


ふふっと莉桜菜は笑う。


「ね、・・・し、あわせ・・・あり・・・・と」


にっこりと莉桜菜は微笑んで・・・・そして、ゆっくりと目を閉じた。



もう、それから彼女の瞼が開くことはなかった。




命の灯火が、小さく揺れてフッと消えた。
いつの日か莉桜菜は言っていた。
人生のレールの終着点があると。
その、終着点に着いてしまったんだな。


まだ、まだ一緒にいたかった。
他愛のない話をして、笑い合って、時には喧嘩して。
そうやって一日、一日時間を刻んでいきたかった。


いつの日かお互い年老いて、昔はこうだったな、なんて話しもしたかった。


ずっと、ずっと莉桜菜の温もりを隣で感じていたかったよ。



「莉桜菜・・・っ」


隣で、お母さんが声を上げて泣いている。お父さんは、泣いているお母さんを抱きしめ、静かに泣いていた。
俺も止めどなく流れる涙を拭うことのないまま、まだ暖かい莉桜菜の手をぎゅっと握りしめた。




莉桜菜、莉桜菜、莉桜菜。
もう、キミは旅立ってしまったんだね。


「・・・っおやすみ、」


永遠の眠りよ。
莉桜菜に安らかな時間を。


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