キミに伝えたい言葉がある
数回しか来たことのない莉桜菜の家。
目の前の玄関は、俺にとって鉄の重い門に感じた。
呼吸を十数えて、ようやくインターホンを鳴らす。
少ししてから莉桜菜のお母さんが姿を見せた。
「真司君、久し振りね」
「ご無沙汰しています・・・」
頭を下げると、お母さんは中に入るように促してきた。
俺は、素直に莉桜菜の家の中にお邪魔する。
中に入るのは初めてだった。
案内されたところは、リビングだった。
広いリビングで、畳の部屋が続きになっていて、奥に仏壇と・・・莉桜菜の遺影と遺骨が飾られていた。
俺は、すぐにそこから視線をそらした。
「ごめんなさいね、呼び出して・・・」
「いえ、」
お母さんは、お茶とお菓子を俺の前に置いてくれた。
そして、またどこかへ行き、戻ってきたときには、手に封筒のような物を持っていた。
「これ、」
お母さんは、俺にその封筒を渡してきた。
受け取ると、表に住所と俺の名前が書いてあった。しかし、住所は俺の家ではない。
「昨日、届いたのよ」
「誰から・・・」
裏面を見てみると、俺は目を見開いた。
綺麗な字で、莉桜菜の名前が書いてあったからだ。
「莉桜菜から、あなたへの手紙よ。私にも主人にも届いたの」
「莉桜菜から・・・」
「病院に聞いたら、担当していた看護師さんが預かっていたんですって。自分が死んだら出してほしいって・・・」
ふわりと微笑む莉桜菜のお母さんの表情はとても穏やかだった。