キミに伝えたい言葉がある
莉桜菜が見られなかった桜を俺は5年、ずっと見続けてきた。
今年も綺麗な桜が見られて良かった。
また、次の春に来よう。
俺は、一度止まって、桜を見上げた。
見納めと思って目に焼き付けたあと、また、歩き出そうとする。
『ーーーーー真司君』
懐かしい声が俺の名前を呼んだ。
「え・・・?」
振り返ると、桜の木の下にここにいるはずのない人が立っていた。
『真司君』
「ーーーー莉桜菜?」
俺は、周りを見渡す。
さっきまで花見をしていた人や俺を呼びに来た光平の姿がなくなってこの公園に俺と莉桜菜の2人だけになった。
『久し振り』
莉桜菜は、いつもの笑顔を俺に向けてくる。
「・・・どういうことだ?」
『どういうことでしょう?』
「幽霊になって出てきたのか?」
俺は、なんども目を擦ってみるが、目の前にいる莉桜菜の姿は消えない。
莉桜菜は、クスクス笑いながら俺の方に歩いてきた。
まるで、本当にそこにいるかのように足先までちゃんとある。
『今日だけ、いいよって言って貰ったの』
「?誰に?」
『内緒・・・それより、大きくなったね、真司君』
どうやら、目の前にいる莉桜菜は、俺が作りだした幻想とかではないようだ。
「ーーー莉桜菜は、変わらないな」
『そりゃ永遠の17歳だからね』
「そうだよな」
俺たちは、笑い合う。
『桜ーーーーこんなに綺麗に咲くんだね』
莉桜菜は、桜を見上げながら目を細める。