キミに伝えたい言葉がある

言葉に詰まっていると、転校生が俺たちの前に座った。

「ね、何か弾いてよ！」
「え・・・」
「聞いてみたいな」


キラキラとした目で俺たちを見てくる。
俺は断ろうとしたけれど、光平はやる気満々みたいで、ギターの準備をしてしまった。


「おし、歌ってみせようじゃないか」
「わーい」


パチパチと拍手なんかしてもう弾かずにはいられなくなってしまった。


「ほら、真司、行くぞ」


光平にもそう言われてしまったからには、俺はもう諦めるしかなかった。
まぁ、１人だし、転校生だしいいか。


そう思って俺もギターの準備をした。
音を確認して、光平を目を合わせうなずき合い、息を合わせてギターを弾く。


「♪～♪～・・・」


今俺たちが弾いているアーティストの曲。
完璧に覚えているその曲を俺たちがギターの音に合わせて歌った。


目の前で転校生は目を閉じて聞いている。
たった１人のオーディエンスに俺は歌に気持ちを乗せて歌う。
少しでも、気持ちが届きますようにと願いを込めて。




「ーーーーすごいね」


歌い終わって、ふうっと息を吐けば、始まる前よりも大きな拍手が贈られてくる。


「そう？ありがとう」
「上手だね、真司君」
「・・・どうも」
「素敵な、安心できる歌声だったよ」


そういう転校生の言葉が、何でか俺の心の中に染み渡っていった。