キミに伝えたい言葉がある


『今日も、河原集合!』

いつもの誘い。
今、イライラしているから断りたい気持ちもあったが、逆に大きな声で歌いたい気持ちもあり、二つ返事で返して身支度をする。
ギターを持って一階に降りれば、母さんはいつものことなので特に何も言わなかった。
何か言われたら言い返してしまいそうだったから逆にありがたかった。


いってきますとだけ小さく言って俺は家を出た。
まっすぐ寄り道をすることなく、光平との待ち合わせ場所に向かう。
河原にたどり着くと、今日は珍しく俺の方が早かったみたいだ。
光平の姿はまだどこにもなかったので、いつもの場所に座ってギターをケースから出す。
音を試しに出してみて、音がずれていないか確認して適当に弾いてみる。
それだけでも、いらだちが少し軽くなったような気がした。


5分くらいしたあと、光平がやってきた。


「悪い、遅れた」
「いや、俺もきたばっかだし」
「そうか・・・真司、お前何かあった?」
「なんで?」
「機嫌悪そうだから」


俺の隣でギターの準備をしながら光平が聞いてくる。


「あぁ・・・苛つくことがあってさ」
「へぇ、珍しい。お前が苛つくなんてよっぽどのことがあったんだな」


ハハッと笑って、光平はギターの音をチェックして俺を見た。


「じゃあ、その苛立ちを歌って吹き飛ばすか」


ニッと光平のその笑みは、俺の波立っている感情を抑えてくれているようだった。


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