キミに伝えたい言葉がある



俺は頷いて、光平と何の曲を歌うか決めてから、心の底から声に気持ちを乗せて歌った。




「ーーーーーふぅ」


一曲、二曲・・・と満足するまで休むことなく歌い続けた。
歌うことで、どんどん俺の中にあった苛立ちは消えていき、歌い終える頃には和らいでいた。


「どうよ?今の気分は」
「最高、調子良い」
「そりゃあ良かった」


光平は、ギターを適当に弾きならして同じように一息ついた。


「こんなに連続で歌ったの久し振りだなー」
「そうだな」
「真司の機嫌もよくなったからいいけどよ」
「ハハッ」
「でも、疲れたわー」


俺も、疲れた。
正直今日はもうこれ以上は歌えそうにないし、ギターも弾けない。
こうなったら無理しないほうがいいので、ケースを取り出してからギターを片付ける。
光平も同じようにギターを片付けた。


「はー・・・やっぱ歌っていいなー」
「そうだな」
「真司と歌っているのもあるだろうなー」
「・・・・」


そんなこと言われると、照れてしまうじゃないか。
口下手でもあるからその光平の言葉には上手く返せなかった。
俺こそ、光平と一緒に歌えて嬉しい、とでも言ったら良かったのだろうか。
でも、口からその言葉が紡がれることはなかった。


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