キミに伝えたい言葉がある
その中で、俺の視線の先に見慣れた男が映った。
アコースティックギターを手になにやら弾いている。
俺は、その男に近づいた。
「光平」
名前を呼ぶと、男は顔を上げた。
俺をその目に写すと、ニッと笑う。
「よう、真司。遅かったな」
「そうか?連絡貰ってすぐ出てきたけど」
「俺の方が早かったからな」
「あ、そう」
光平の隣に座って俺も持ってきたアコースティックギターを出した。
光平は、中学の時に意気投合してずって一緒にいる数少ない友人の1人だ。
高校は別のところに行ってしまったが、こうして連絡を取り合って時間が合えば会っている。
「あ、真司曲マスターした?」
「あー・・・もうちょい」
「俺もだ」
ピックを持ってギターを弾き始める。
俺たちは、音楽が好きという共通点があった。
ギターを弾くこと、歌を歌うこと、好きなアーティスト全てが合致して意気投合。
いつの日だったか同じアコースティックギターを買って、時間があるときは河原で弾いている。
歌手を目指しているというわけではなく、おたがい好きな音楽を共有出来るこの時間を過ごすことが好きだった。
今は、有名アーティストの曲をコピーして練習している。
俺たちみたいな二人組で、激しくもなく穏やかに歌うアーティストだ。
頭に楽譜を浮かべながら間違えないように弾いていく。
今、この瞬間この時間は俺たちの音楽だけだ。
「なぁ、真司。俺さ考えたんだけど」
歌が終わって互いに練習しながらふと光平が口を開いた。
「何?」
「俺、音楽作りたいなって思い始めているんだけど」
「音楽を作る?」
「そ。誰かの歌をコピーするとかじゃなくてさ」