キミに伝えたい言葉がある
「ふん、ふん、ふん♪」
「上機嫌だな」
俺の横を軽くスキップしながら莉桜菜はご機嫌だ。
「そう?」
「見るからに」
「そりゃあ、体育祭が楽しみだからだよ」
「体育祭が?俺は憂鬱だがな」
「ふふっ、みんなでわいわい出来るの嬉しいもの」
クルクル回りながら莉桜菜は、体育祭がどんな風に楽しみなのか俺に語る。
俺は、莉桜菜がそんなに楽しみに出来ることがすごいなと思った。
「俺は、体育祭が楽しみに待てる物ではないな」
「どうして?」
「苦手だからだ」
みんなと協力して何かをする、とか協調性が薄いので嫌なことだ。
グループ活動とかも嫌いだ。
「じゃあ、今年の体育祭で克服しよう!」
莉桜菜は、握り拳をするとふと、何かに気づいたのか、俺に背中を向けて走り出した。
「莉桜菜?」
俺は、莉桜菜の後を追いかけながら名前を呼ぶ。
莉桜菜は、近くの公園にある大きな木の前に立っていた。
「どうした?」
俺は、莉桜菜の隣に立って彼女の横顔を見てから同じように大きな木を見上げた。
「この木って何の木?」
「これか?・・・たぶん、桜、だな」
「桜の木?」
大きな木は、樹齢いかほどかはわからないが、太くて巨大だ。
枝の先には緑の葉が茂っている。
確か、この辺りは大きな桜の花が毎年咲いていたなと記憶があった。