キミに伝えたい言葉がある
「気づかなかったなぁー」
「花が咲かないと、ただの木だもんな」
「早く咲かないかなぁ」
「好きなのか?」
「うん、同じ字が入ってるし、桜、かわいいもん」
莉桜菜の漢字の中に、桜という文字が入っている。
そして、彼女は3月生まれみたいで、それも桜の漢字が使われている理由の一つだと言った。
この大きな木は、あと数ヶ月すれば綺麗な桃色の花を咲かせるだろう。
「また、3月に見に来れば良いだろ」
「そうだねー」
莉桜菜は、満足いくまで桜の木を見上げた後、俺に顔を向けた。
「さ、帰ろう」
「あぁ・・・あ、そういえば」
「?何?」
「桜って、めちゃくちゃ毛虫が多いんじゃなかったっけ?」
「!酷いっそんなことないでしょっ」
「さぁ?」
「さぁって何!さぁって!」
ベシッと莉桜菜は、持っていた自分の鞄で俺の背中を叩いてきた。
「いてっ」
「ふんだ!」
莉桜菜は、肩を怒らせながら俺よりも先に歩いて行く。
俺は、叩かれた背中を摩りながら、一度、桜の木を振り返った。
この桜が咲く日にまた、莉桜菜と見に来ることが出来るだろうか。
いや、来よう。
きっと桃色の花を見た莉桜菜は大喜びするだろうな。
俺は、まだ見ぬ未来を想像して、小さく笑ってから怒っている莉桜菜の機嫌取りをするべく追いかけたのだった。