幼い恋と笑われても

ある朝。
全校生徒が体育館に集められた。

季節は春だというのに
刺さるような、ピリッと冷たい空気を肌に感じた。
まだ冬が残ったような体育館は
湿気で床板が歪み、歩くたびギシギシと鳴った。

「みなさん、おはようございます!」

生徒会長と名乗る男の声が
ステージ脇のスピーカーから体育館一面に広がる。

「今日の生徒総会ではクラス紹介をします!」

いや、何も聞いてねぇぞ、、、。
もしかしてその場のノリでやる切る感じ?

入学してまだ1ヶ月足らずの私たちには
あまりにも過酷な試練である。
クラスの人の名前だって未だに覚えられてない。

「では、2-Aからお願いします。」

その言葉を合図に立ち上がる生徒。
なんの戸惑いもなくステージに上がっていく。
そして、袖にいた女子が口を開いた。

「私たちは2年A組です!」

完全に仕込まれていた。
女子はそのままクラスについて語りだし、
これからみんなで踊ると言った。
果たして踊ることは紹介に値するのだろうか。
それでこのクラスの何が現わせるのであろうか。
むしろ私が戸惑った。

そして彼女らは踊り出したのだ。
なんとも爽やかな曲調で、夏感のすごい音楽だった。

私は端からまじまじと2-Aと名乗る人たちを観察した。
恥ずかしがって顔を下に向けて踊る人もいれば
完全にふざけて目立とうとする人もいる。

観察しているうちに、
私はある男子に目がいった。
髪は栗色でストレート。
肌は白く、少し華奢な体つきなのに
そこそこ身長はあった。
ジャージで萌え袖をし、寒そうに踊っていた。
恥ずかしいのか、隣の人となんだか会話をしている。

私は彼の照れを隠した笑顔に目が離せなかった。

彼はなんだか綺麗だった。

朝の日差しが体育館の窓を抜けて彼の顔を照らした。
時間はゆっくりと流れ、
私の世界は彼と2人だけになった。

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