君影草は誠を乞う

「伊織ちゃんこっちお願い。」

「はい!今行きます。」

私は今、
お菊さんの言っていた通り
お店から溢れるばかりのお客さんが来る
この[丸菊]で働かせてもらっている。
あの夜から早くも2ヶ月が経とうとしていた。

あの後私はお菊さんに連れられ、
私は開く前の丸菊へと向かった。
丸菊に着くと、
お菊さんは大きな声で

「お父さん、市。いるかい?」

と呼ぶと、
奥から少し痩せた優しそうな中年の男性と、
くりっとした目が印象的な
可愛らしい女の子が出てきた。

「どうしたのお母さん…。」

どうやらこの子が、
お市ちゃんというらしい。
歳は、私の少し下で十二、三歳くらいだろう。
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