続・オトナになるまで待たないで

ボケと目覚め

おっちゃんと別れ、ゴウの仕事が終わるのをファミレスで待った。



ああ、疲れた……


聞きなれない関西弁に、

なんとなく関東とは違う関西人の服装。


「おおきに~ありがとうございます」


忙しそうに店員さんが働いている。


仕事探さなきゃな。

家はそのうち探すとして、とりあえずはゴウのとこに居候するしかないな。


ねむ………


目を閉じると、人影が浮かぶ。

その影に向かって言った。


「私、こっちに来ました」


だけど、影は振り返らない。

謝った方がいいかな。


なにを?


分かんないけど、すごい寂しそう。


悪いことしたかも。

なにしたっけ?


分かんないけど。


繰り返し、繰り返し、

謝った方がいいかなぁ

って考えて、そのうちムカついてきた。


「店長はさ!」

「うわっビックリした!なんてぇ?」


ゴウが立っていた。



わたし、寝てた。

ヨダレ出てた。


「ひま、はたし、はんと言ひまひたでほーか?」

「ナンテナンテナンテ!?ホラ、行くで」

「ゴウはあ?食べないのお?」

「こんな時間に食べへん。はよ!タクシー代が高なる!」


そう言いながら、会計はゴウがしてくれた。



「おっとなー」

「今日だけやで。節約しとんねんから」

「いつもタクシーで帰ってんの?」

「まさか。いつもは電車や」


タクシーを捕まえて乗り込むと、ようやく眠気が覚めてきた。


大きくなったなぁ。

前は女やってる時とゴウやってる時で、全然別人だったけど、

今は上手く混ざってる。


「なんやねん」

「大きくなったなぁ」

「し、ッ失礼やな!ナンやねんソレ!」

「誉めて…」

「誉めてるかいッ」



は、速い……ツッコミが速いよ……


「もうすっかり大阪のオンナになって……」

「言うてることがオバハンやん」


それでもゴウは笑った。


「海は変わらんな。ずっと高校時代から変わらへん」

「うううーん?」

「海はうちのこと初めて『オンナ』や言うた人やねん」

「…え?」

「そやで。駐輪場で叫んどったやん。『このアマ!この世で一番女子って生き物が嫌い』なんやって」


目をつぶった。

頭のなかは、空洞だった。



「海?」

「アレだね」

「なに?」

「わたし、記憶喪失になってるかもしれないね!」


ゴウが唖然とした顔でこちらを見た。


「ツッコみ……」

「ツッコめるかい!」
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