続・オトナになるまで待たないで
エピローグ
私は今、猛烈な勢いで

シオンに返信を送っている。



もうすぐ、手術室に入る、よ、っと


すぐに返信音が鳴った。


ー名前は決めた?ー

ー決めてない。アイツ、忙しすぎて何も決めてくれないー

ー楽でええー


楽でエエったって・・・

もうユキエさんに決めてもらうおうかな。

看護師さんが来たので、端末をしまう。


「ハイ、じゃあね、お部屋の移動しますね」

「はい」


脳手術を受けたこともあって、

大事を取って帝王切開になった。

これから、その手術だ。


「イタタタタッ!」

「大丈夫?」

トウマくんが、支えようと手を伸ばす。

「大丈夫、大丈夫。むっちゃくちゃ蹴ってる」


この赤ん坊ときたら、動きまくってここ数日眠れなかった。

大きくなったら、絶対に文句言っ・・・


「イダッ゙!!」


なんなの!?

伝わってんの!?


手術はすぐに始まり、

「出ますよー」

と、助産師さんが言うか早いか、

「ウギャアア!!ウギャアア!!ウギャアア!!」

と、赤ん坊と思えない声量を出力しながら、

腹から取り出された。


「おつかれまさま〜」

「ギャア!ギャア!ギャア!ギャーッ!!」


ああ~はいはい。

オマエか、暴れてたのは。


あまりの泣き声に、お医者さんも看護師さんも笑っている。

私の頭の辺りにいたトウマくんが、

赤ん坊を抱いている。


トウマくんが抱いていると、本当に小さいなぁ。

可愛いか分らないけど、

どう見てもトウマくん似だ。


「じゃあ、これから赤ちゃん綺麗にしてきますね」

「また後で」

トウマくん達が、部屋から出てゆく。


私は腹を閉じてもらいながら、

今見た赤ん坊のことを考えた。


なんかスッゴイ泣いてたなぁ。

泣いてるっていうより、怒ってる?

激怒?

出すのが遅いんだよ!みたいな。

そしたら、トウマくんの両親に似てんのかな?

あの二人、朝も喧嘩したらしいな。

よく離婚しないな。


眠たくなって、目を閉じた。


お母さん、お父さん、おじいちゃん、

子供が産まれたよ。


赤ちゃんて、本当に赤かった。

もうすでに、愛おしく思えた。

その命は、茜色。


「茜・・・」


初めて、我が子の名前を呼んだ。

もうずっと前から知っていたように。


目の前に、怒り泣きしている我が子の姿が浮かんだ。

力いっぱい、泣いている。


耐えきれないほどの眠気が襲ってくる。


もう一度だけ思った。

「生きて」




【完】
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