続・オトナになるまで待たないで

しのぶネェさんが、かん高い声を上げた。


「いっやぁーん。ゲン様やーん!」


ゲン様だ。

変な呼び方だけど。

本名が「源左衛門」だから仕方ない。

レッドタスクの超常連客だ。


しのぶネェさんは、取るもの取らずゲン様に駆け寄り、同じ席に移った。


源左衛門なんて名前なんだけど、まだ40代くらいじゃないだろうか。

大地主の息子らしいけど、ろくろくモノをしゃべらない。

元々は、ゲン様のお母様が常連だったらしい。

お母様が高級老人ホームに引っ込んでからは、一人でせっせと通って来ている。

なんで来るんだろう?

なにが楽しいんだろう?

ってくらい、いつもニヤついてるだけ。


当然、跡取りにはなれず、

「お母様、居らんようになって大丈夫なん?」

「弟……」

と、なんとか聞き取れる声で言ったそうだ。
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