続・オトナになるまで待たないで
アクビと共にゴウが起きてくる。

髭はもともと生えづらいらしい。

お医者さんにも「ホルモン剤いらずやな」

と、からかってくるそうだ。


でもやっぱり打たないと、

体はどんどん男寄りになっていくので、

せっせと大金払って通っている。


そのせいか、いつも気だるそう。

性別が内と外で違うって

生きてるだけで大変だ。



「ゴミ出してくれたん?」

「あ、出したよ。コンビニ行ったし」

「うっそぉ助かるぅ」

「これ食べる?」

「なん、ソレ!?初めて見た」

「期間限定だって」

「見せて見せて〜!」


ゴウは手に取るなり、パッケージの裏を見る。

何が入ってるかとか、

カロリーをチェックしてからじゃないと食べない。


ゴウとの同居生活は、穏やかに過ぎていった。

姉妹みたいだなぁと思う。


家族っていうの長いこと忘れてたけど、

こういうのも家族なんじゃないかなぁ。


「ジブンの誕生日なぁ、オカンが奢るて」

「ヤッタ!高級食材!」

「何がエエか聞いといて言われたけど、何でも良さそうやな・・・」

「カニは!?あのデッカイ看板見てると食べたくなるんだよね~」

「エエなぁ!久しぶりに食べるわぁ」


カニならカロリー低いもんね。

本当は『ハモ』ていうのを食べてみたいけど、

緊急性はナイ。


この間、千鶴ママが口走った、

私がオンナを出した件については、どう思ってるんだろう。

聞きたいけど、聞けない。


店の中でもゴウは輝いていた。

盛り付けたフルーツやお酒のセットを出すとき、


「ありがと」

っていう声も

小さな窓からチラッと見える顔立ちが、

なんにも知らない少年のようで、

ひたむきさがあって、


胸にチクンとくる。


あの透き通った感じは、

ポエムでも読んでるような、そんな雰囲気だ。



あれから、時々店に顔を出すようになったオーナーが、

朝礼のようなことをやるけど、

そこまで売り上げにこだわっているように見えない。



だから人原発が、

あんなに売上にウルサイ理由が分かんないわけ。


でも私には、ぜんぜん怒らなくなったけどね。

ヤバイもん握られたって、思ってるのかな。

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