続・オトナになるまで待たないで
「アンタ!指に毛ぇ生えとるやん!」

グラコロネェさんが、私の手を取った。


「ホンマや!もう、やめてぇ。女の子やろぉ」

しのぶネェさんが、あきれたように言う。


「そんなん、いっつもやで。とっくやで」

エミリオネェさんが、煙を吐き出す。


「ちょお!うちとこのエステ行き!紹介したるから」

「紹介料、欲しいだけやろ」

「せやったら、うっとこの方がええ!近い!ほら、ホラこれ!」


げげっ。

バッグから紹介クーポンが出てきた!



グラコロネェさんが慌ててそれをさえぎる。

「ぜったい、うちの方が得やって!ホラ!ホラこれよ!?見て!なあ見て!」

「遠い遠い!電車賃がもったいない!」

「全身脱毛するんやったらなぁ何十万もかかんねんで!?せやったら、通う価値あるやん!」

「アホか!帰りにひらパーでも寄るん!?」

「ひらパーでも何でも行ったらええがな!お釣りがくるで!」

「脱毛帰りに寄るとこちゃうやろ!」


なんで全身脱毛まで、ハナシがいっちゃうんだよ……

ひらパーってなんだよ……



エミリオネェさんまでが、静かに語りだした。

「私の行ってるとこやったらなぁ、フェイシャルもついてくるし、ポイントが直ぐ貯まるしな。ほとんど、化粧品買わんで済むんやわ」


こえぇ。

静かなだけに、こぇぇえ。


カラコロと鳴るベルの音で、速攻振り返った。

ゴウだ!助かった!


………じゃない。



顔が…………暗い。


「ど、どうしたの?なんかあった?」

ゴウは腰もかけずに、

「帰ろ」

とだけ言った。


「なんなん?どないしたん?」

グラコロネェさんが立ち上がって席を譲る。


「く、クビやって」

「クビ!?」


さすがのネェさんたちも声が出なかった。


私もビックリしすぎて、

「やっぱグラコロネェさんが立つと、二人分の席が空くんだなぁ」

ってワケわかんないことを思った。


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