続・オトナになるまで待たないで

「雛ママな、学習障害あんねんて」

「学習障害?」

「数字が意味のある字に見えへんのやって」


残り半月。

クビまで時間がない。


「そんな簡単にはクビになんかできないでしょ」

と思ったけど、

仕事が終わると憮然とした顔でゴウが報告した。


「ロッカーのもの出せ言われた」

「はあ?まだ仕事来るじゃん!」

「もう、イジメるんを楽しんどる感じやな」


ゴウのロッカーは、新人の…宵子ちゃんたらこ……なんだったっけかな?

そんな名前の子に譲らされたそうだ。


隙あればゴウをイジメてるせいか、

原発本人はパワーフルチャージ!って感じで、

「こっちとぉ、こっちぃ?どっちがええのんかなぁ?選べへーん♪」

とか言って、

ブランドのピアス画像の一覧を見せてきたりして、


ムダに機嫌がいい。



やるっきゃねぇ。


仕入れの伝票をカメラで撮る。



売上はそれぞれが記憶しておくことになったけど、


「はあ?ジブン、全部のテーブルでナニが出たか覚えとんの!?」

しのぶネェさんが、すっとんきょな声を上げた。


「だいたい分かりますよ」

ゴウが何てことない顔で答える。


「天才やなあ」

「すごい」



酒やフードの売上と帳簿上を付き合わせて

計算してみる。


「やっとるな!やっぱりやんか!」

「水増ししとるいうこと!?」

「これはアクドイで」


証拠になりそうなものは、すぐにトンちゃんに送って精査してもらった。

すぐに連絡がきて

「これさ、もっと昔の伝票ない?」

と言うので、

ゴウが本店の事務所まで行って、

仕入れ伝票をコピーしてきた。


またトンちゃんから連絡がきて

「あのね、仕入値がおかしいね」

「おかしい?」

「この………最近、業者変えた?」

「ああ、八百屋が出禁になったよ。私に乱暴して」

「でへっ、なんだソレ。この、前に使ってた八百屋ね、高すぎるよね」

「値段が?」

「そう。銀座だってこんなにしないよ」


なんで見過ごしてたんだろう!?

字が汚なすぎるから!?

それって、わざと?

知らないけど悔しい!やられた!


「後はコレをどうするかやな」

グラコロネェさんが言った。


「せやけど、なんでオーナーも気づかへんねん」

「去年から具合悪い言うて、ちょくちょく入院してはんねん」

「糖尿持ってはるからな」


いろいろ考えて、

「匿名で送りつけよう」

ということになった。


私らが騒いで証拠を消されても困るし、

実際の被害者はオーナーだから。

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