続・オトナになるまで待たないで
駅の小さな灯りが見えてきた。

まだ、電車がくるまで30分もある。

あーあ、さっむい。

タクシー呼べたらなぁ。


毎日働いて、

食事は近所の旅館で一食300円払えば食べられるっていうから、

それを毎月店主に払って・・・

という生活を始めて4カ月経った。
本当にお金を使う場所がない。

それでも手持ちのお金が尽きて来て、麓まで降りて貯金通帳を確認した。



「え・・・・????」


全然、増えてなかった。

給料がまったく振り込まれていない。

何度も自分の目を疑ったけど、振り込まれた形跡がなかった。

慌てて店主に確認した。

「ああ!?忙しくってハァ行く暇ねぇって!」

「あの・・・じゃあ、いつ?」

「いぐいぐ!!そったらとこ突っ立ってんでねぇ!おめぇみてぇなの雇うこっちの身にもなってみれ!!」


そのまま、給料が振り込まれることはなかった。

思い余って、旅館のオバサンに相談した。

「もう、ここに払うお金もないんですよ。どうしたらいいんですかね」

「あっらあ。そったらもん払うことねぇのよ!」

「だって・・・」

「最初から出入りの業者は、さっぴかれてんのさ。あんたはタダよ、タダ!」

「さっぴかれてる・・・・?」

「バクチ狂いだ、あのオヤジよぉ。パチンコさ行って、すっからかんにすちまうんだ」

ワケが分からない。



今度は、警察に行ってみた。

観光客には機嫌の良い駐在さんは、話を最後まで聞かなかった。

「めぇから思ってたんだハァ!この家出娘。とーちゃんとかーちゃんの言う事も聞かねぇで、こったら勝手な生活してたらハァそんな目に遭うのもあったりめぇだ。家さ、けーれ!」

こんな話は、あっという間に広がり、店主は逃げられたら困るとでも思ったのか、

食べたくもない和菓子買ってきたり、

やけに慣れ慣れしく話してきたり、

それはそれで気持ちが悪い。


・・・で、夜逃げ。


なんで私が逃げないといけないのかなぁ。



小さな駅に、ともし火のような車体が近づいてくる。



もういい。
怒られても何でもいい。

ゴウに会いたい!
< 4 / 102 >

この作品をシェア

pagetop