続・オトナになるまで待たないで
秋の空
「オーナー、来なくなっちゃったね」


隣を歩くゴウに言った。


「急に店が広くなった気ぃするわ」

気の抜けたような声で、ゴウが答えた。



街は黄金色になっていた。

たまには百貨店でも行こう!ってことで、

街を歩いている。


だけど、関東のような

「ハーイ!スポーツの秋でえーす!」

というようなラジオDJ調の秋晴れはなくて、


「降ってもいい?あかん?降らん方がええ?」

とでも言いたげな毎日だ。


「結局、どうなるのかな」

「クビにするには、キッチリ証拠を揃えんとな」

「オーナーがいなくなっても、原発は稼働しなくなったね」

「あの人、借金があるかもしれんな。年中、こそこそ電話かけてな、懇願しとる感じやねん」

「へぇ~」

「せやから、辞められへんのんちゃう」


原発さえ静かになってくれたら、もうそれでいい感じだなー。


今度は、だれがチーママになるんだろう。

年齢で言うと・・・分らない。

みんな自称「百億歳」か「永遠の十六歳」だから。



・・・・!!?

あれなに!?


ゴウの袖を引っ張った。

ゴウが驚いた顔で私を見た。


ヤバ。マジかっこい。


じゃなくて!!


「し、しのぶ姉さんが、ゲン様と・・・いる!!」

「え・・・・????」


思いっきり、堂々と、腕組んで歩いてる!

デートしてる!

お客とデートしてもいいんだけど、

こんな昼間ッから?


ゴウの声が高まった。

「式場やで!?式場から出てきはったで!?」

「しきじょう??え!式場!?」

「せや!あれ、ウェディング専門のフレンチや!」

「な、な、な、」


マジかーーーーーーーー!!!



あっ・・・目が合った!



「ハアーイ!」

と、しのぶ姉さんが手を振ってくる。


「『ハアーイ』って……!?」

「来る来る!なんんんんで来んねん!」


スキップしてるし。

ゲン様引きずって、よくそんな器用な真似ができるな。



しのぶ姉さんは、はち切れんばかりの笑顔で私たちの前に立った。


「もお、なにしてはるのぉ?」

「こっちのセリフですよ・・・」

「ワタシらはぁ、式場え・ら・び!」


うわあ・・・



ゲン様の顔を見た。

いつもと一緒。

ふにゃけた顔でちょっと笑ってるだけ。



「大丈夫っすか。マジっすか。なにをどうするつもりなんすか?」

「もうすぐなぁ結婚するね~ん」





なんにも言葉が出てこない。

こういう時、なんて言うの?



「おめでとうさんどす」


ゴウの腑に落ちない声。

落ち葉が一斉にざわめいた。
< 40 / 102 >

この作品をシェア

pagetop