続・オトナになるまで待たないで
四十九日を過ぎて、今夜にも雪が降るという日のことだった。

「今日はお客さん来ないだろうなー」

と思いながら、

営業前の店で仕込みをしていると、

店の電話が鳴った。

その日、もう出勤していたヨーママが電話を取った。


突然、

「ウオオオオオオオオオオ!!!!」

という雄叫び声が聞こえた。


慌ててフロアーを見ると、ヨーママが崩れ落ちている。


な、なに????

今の声、ヨーママ?


バックルームから、ゴウも飛び出してきた。

私達が呆然としていると、別のオネェさんたちも出勤してきて、

「どないしたん?」

と聞いてきたけど、私達にも分らない。


「ひ、ひなちゃん?ちゃうやんな?」

と、一人のネェさんが聞いた。


「あかんかったああああああ!!!」

と叫んだヨーママは全くの男声で

こんな時じゃなかったら、

笑っちゃったかもしれない。


「ひなちゃん!?なぁ!?ひなちゃんのこと!?」


自分の口から、わあー!という声が漏れた。

その時には、もう私だけじゃない、

みんな泣いていた。


いやだ、いやだ、いやだ!!

もう誰も、

誰も死なないで!


さっき食べたスパゲティが、

喉までせり上がってきて、

シンクに思い切り吐いた。


泣いて泣いて泣きはらして、

だいぶ経った頃、

ゴウが言った。

「開店しよ」

一瞬、静かになった後、誰かが言った。

「ムリやあああ」

ゴウは涙を拭いて、鼻をすすり上げた。

「開店しよ」

「ムリや!ワタシはムリ!!」


ゴウは首を横に振った。

「やろ」
< 52 / 102 >

この作品をシェア

pagetop