続・オトナになるまで待たないで
「しずくとケンカしたん?」

タバコをくゆらしながら、エミリオネェさんが聞いてきた。


「ケンカみたいなんは、しました」

「ぜんぜん、ハナシせーへんやん」

「でもそれだけとチガウっていうか、人が変わった感じします」

「せやな。スタッフに注意するのに、よどみがないなぁ」


その分、親しみやすさが減ったような気がする。

でも上に立つ人間なんだし、それで良いのかも。

寂しいけど。


オーナーが変わって、ボーナスが減った。

そのせいもあって、辞めるネェさんも出てきた。

もう、しのぶネェさんもいない。


私も考えちゃった。

このままで、良いのかなって。

例えて言うと、

部屋のモノを押入れに突っ込んだまま暮らしてるけど、

心の中では、

「アレ片付けなきゃ、アレ捨てなきゃ」

って、ずっと気になってるみたいな感じ。


特に松井さん。

松井さんに一言謝るなり、

お礼を言うなり、

しなきゃいけないんじゃないか?


でも会う勇気がない。

松井さんは、私の黒歴史そのものだから。

考えるだけで、息ができなくなる。


タバコの煙を見てたら思い出した。


そうだ、お寺に行こう。

一回、千葉に帰って拝んでもらおう。

そうだ、それくらいなら出来る。
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