続・オトナになるまで待たないで
ゴウのお母さんは、ゴウが店長になってから店に遊びに来るようになった。

今や「しずくママのオカン」ではなく、

「ユキエさん」と呼ばれている。

着物姿が素敵な人なので、

ネェさんたちにも好印象だ。

大阪vs京都の話でいつも盛り上がっている。


京都人のメンドーくささは、

いつもゴウから聞いている。

でもユキエさん自身、

「他所さんには分からしまへん」

と諦めているらしい。


電車に乗ってから、

「あ、電話しとけば良かった」

と気がついて、駅を降りてから電話をかけた。


「遊びに来てくれたん!?今、出かけとるけどすぐネキ(?)どすねん」

というので、ぶらついていることにした。


飲食店ばっかだなー。

あ、あの人は女のかっこしてないけど、オネェだ。


古い喫茶店だなー。

あのオジサン、うちの店にハマりそう。


いつか、ゴウと二人でお店ができたらいいのに。


「海ちゃん!」

振り返ると、ユキエさんがいた。

「海ちゃんは、ホンマ観察するのが好きやなァ」

「そう?」

「今どきの子ぉいうたら、手に機械持ったまま離さへんやろ?」

「そうかなー」


ユキエさん、今日も着物を着ている。

「急にごめんね。用事があったんでしょ?」

「かましまへん。今日は病院の日やったやろ。寄らはるんとちゃうかなぁ思うてましたんや」

マンションに移動して、お茶を出してもらう。


ひゃあ。綺麗な茶菓子。

目に焼き付けとこ。

どうやって、このグラデーションを出すんだ?


「病院で何て?」

と言われて、我に返った。

「あ、ああ。ちょっとだけ腫瘍があるって」

「イヤァ!ホンマに?それはどうしはるの?」

「手術するのか微妙だから、今度は家族と来てくださいって言われたんだけど・・・あのーユキエさん、一緒に行ってくれないかなぁ?」

「もちろん、エエよ!うちでエエんかな?」

「ユキエさんがいいの。だって、うちらはまだまだ子供だもん」

「我が子はいくつになってもヤヤコやけど、海ちゃんはシッカリしてはるように見えるけどなぁ」

「ぜんぜん。私は子供だったよ。大人のつもりでいたけど」


それに気がついた今は、過去の自分が恥ずかしい。

< 64 / 102 >

この作品をシェア

pagetop