続・オトナになるまで待たないで
捨て猫系女子

置き去り騒ぎ

開店前のキッチンで、

サッつんがまた新作を考えている。

下手じゃない。

下手じゃないけど、原価率が高すぎる。


私がダメ出ししなくても、

ママたちに突っぱねられるだろう。


本人もそれは分かってるから、

店で出したいとは言わない。


この人、本当に遊んでるだけだな・・・

何がしたいんだろう・・・


なんて、人の心配をしてる場合じゃない。

頭の腫瘍が少しずつ大きくなっているのだ。

もう1センチ大きくなったら、手術決定らしい。


頭を・・・切るってか。

もうマジで嫌・・・。


「こんにちは~」

あらぬ所から声を掛けられた。


「え?は?うわっ!!」

非常階段に繋がる出入り口から、懐かしい顔が覗いた。


「おあ、おおあああおオッチャン!!」

「なんや、ああぉおおああ!て。母音の練習か」


この店まで連れてきてくれた、あのオッチャンだった。

「どーしたの!?元気!?」

「ボチボチやな。アンタ、俺に借りがあるなぁ?」

「・・・金なら、ないケド?」

「そんなんちゃうがなー!この子!この子、預かってんか」

オッチャンは自分の後ろから、女の子を引っ張り出した。


「は???」

「家もない、金もない。な~んもない。せやし、頼むわ」

「頼むわって・・・はあ!?」

「アンタもナンギしたやろ?家がないて大変やねん。ほな、頼んマッサ!」

言うなり、オッチャンは出てゆく。

止めるということも思いつかないくらい、あっと言う間に。


え゙?

え゙え゙?


残された女の子は、困ったように上目遣いでこっちを見ている。


「どうするんすか?」

サッつんに言われて我に返る。


「どう・・・」

「サッつん、オハヨー!・・・て、その子なに?」

「置いてかれた・・・」

「誰が?」


置いてかれたー!!
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