続・オトナになるまで待たないで

オトナのケジメ

朝一番の新幹線で帰るという、松井さんを見送った。

なんと日帰りのつもりだったらしい。


あの狭いベッドで、なんとか一緒に寝た。

寒いし、ねむいけど、まだ誰にも会いたくない。

全身がフワフワして、飛んでいきそうだ。


ゴウに話さなきゃいけないかな。

どこから話せばいいんだろう?


前に「うそや、気づいてたたやろ!」って言われたっけ。

今思えば、確かに感じてはいた。

あの熱量に飲み込まれるのが怖かった。

だから、何が何だか分らないものって事にして、

蓋をしてた。


意味もなく、その辺りにある神社や寺を回って、

大阪へ来た時と同じように、うどんを食べて家に帰った。


帰るとゴウはまだ寝ていた。

食べるか分かんないけど、スープ用の野菜を切っていると、ようやく起きてきた。

包丁を置いた。


眠れなかったみたい。

いつもみたいに、ケアしてから寝なかったのかも。

顔がむくんでる。

だけど、不思議。

その顔は、今までで一番、女の子に見える。


私が何かを言いかける前に、ゴウがそれを遮った。

「分かってるよ。松井さんがずっとジブンのこと好きなんは・・・だけど、どんな残酷なことか分かる?いっくら私が想ってもノンケの人間は、私のことオンナやと思うてくれない!」

「私は、アンタのことを愛してる」

これを言う日がくるとは。

「高校時代から、ずっと。他に何にもいらない」

ゴウは、あ然としたような顔で私を見つめた。


言いたいことは、沢山ある。

だけど、本当に言いたいことは一つだ。

涙が出た。

「・・・愛してるよ」


もう一度、包丁を握ろうとした。

でも握れないまま、キッチンカウンターに手をついた。

涙があふれて、止まらない。


いつの間にか二人で抱き合って、

泣いていた。


ゴウがお母さんと暮らすと決めた時、

これと同じ状況になったっけ。


終わりが近づいている。

こんな風に、終わっていくんだ。

ずっと早くオトナになりたいと思ってた。

でもなれなくて、もがいてたのに、

終わるときは強制終了なんだ。


薫ちゃんが部屋に入ってきて、戸惑ったように顔をのぞかせてる。


「スープ、飲む?」

泣きながら聞いた。

薫ちゃんがうなずいた。

しゃっくりしながら、三人分のスープを作った。
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