いつかきっと忘れるけれど、傷はすぐには癒えなくて。


とりあえず絆創膏を貼っておこうと思い、棚の中にしまってある救急箱を取りに行った。茶色いシンプルなこの棚は、彼とホームセンターで買って一緒に組み立てたものである。二人して不器用で、完成するまでにたくさん時間を費やしてしまったけど、楽しくて幸せな時間だった。



下から二段目にある救急箱を手に取って立ち上がると、つい「あっ」と声が出た。私の目の前に一枚の写真が現れたからだ。半年前、北海道に旅行したときの写真。私と彼のツーショット。

ラベンダー畑の前で笑う二人は、楽しそうで暖かい雰囲気だ。カメラを向けられると固くなってしまう私もとても自然に笑っている。


美しく広がるラベンダー畑も、澄んだ綺麗な空気も、きっと今でもそこにあるのに、今更行ったところでこの写真みたいにはもう笑えない。そう思うと、ただただ悲しくて、どこで間違えたのだろうと悔しくなった。



築いてきた関係や愛情の脆さなんて、さすがの私でも知っている。それなのに、実際に直面してしまえば受け入れ難い。そんな知識と感情のズレが、私の傷を深いものにしてしまったのだと思う。


< 10 / 12 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop